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【海峡を越えて 「朝のくに」ものがたり】(24)警察官の半数近くが朝鮮人だった 映画『望楼の決死隊』に見る実相

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【海峡を越えて 「朝のくに」ものがたり】
(24)警察官の半数近くが朝鮮人だった 映画『望楼の決死隊』に見る実相

映画「望楼の決死隊」に出演した原節子 映画「望楼の決死隊」に出演した原節子

 一方、古川が残した一文には、この朝鮮人警察官が一度、酒の上での不祥事を起こしたものの「『見どころがある男だ』として罪一等を減じた…果たして、拳銃強盗事件の捜査で凶弾を左ほほに受けながらも犯人を逮捕した」というエピソードが綴(つづ)られている。

 古川と朝鮮人部下との交流は、終戦後に、古川の家族が日本へ引き揚げるときまで続く。

 ■日朝住民の交流描く

 映画『望楼の決死隊』は戦後、軍国主義の国策映画として批判も浴びた。戦時下という時代もあったろうが、その後は、左翼色の強い監督というイメージが強まってゆく今井にとっては、確かに異色の作品かもしれない。

 ただ、この映画の見どころは、匪賊と国境警察隊の派手な戦闘アクションだけではない。むしろ私には、雄大な朝鮮北部の大自然や、当時の朝鮮人の生活、風俗、日本人と朝鮮人との交流の“息づかい”といったものを丹念に描いたシーンの方が興味深い。

 雪と氷に包まれた急峻(きゅうしゅん)な山を見れば、「こんな奥深い辺鄙(へんぴ)な地に日本人はよく巨大な水力発電所などを造ったな」と感心する。凍った河を、すいすいとスケートで滑ってゆく朝鮮人住民らのシーンでは、ここが今なお、中朝混在の地であり、密貿易や脱北者が逃げるルートになっていることがよく分かる。原節子が隣家の朝鮮人の奥さんのお産を手伝いにいったり、殉職した朝鮮人警察官の遺影に日本人の同僚がお雑煮を供えたりするところなどは心温まる場面だ。

 2つの民族は反目しあっていたのではない。映画に登場するような国境警察隊や日朝の警察官の不断の努力によって、朝鮮の治安は改善され、人口は約2倍に増加し、農業・商工業の飛躍的発展を見たのである。=敬称略、土曜掲載(文化部編集委員 喜多由浩)

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