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「須賀敦子の本棚」刊行へ 未発表の翻訳含む8作品 監修の池澤夏樹さん「個人編集の世界文学全集」

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「須賀敦子の本棚」刊行へ 未発表の翻訳含む8作品 監修の池澤夏樹さん「個人編集の世界文学全集」

今月刊行が始まる『須賀敦子の本棚』シリーズ 今月刊行が始まる『須賀敦子の本棚』シリーズ

 第2巻に入る米作家、ウィラ・キャザー著『大司教に死来る』の新訳は、聖心女子大時代の卒業論文。第9巻には、遺品から新たに見つかった、イタリア生まれのダヴィデ・マリア・トゥロルド神父による戯曲『地球は破壊されはしない』の初邦訳を収める。

 このほか須賀さんが自著などで言及していた作品も選んで収録。長い歳月をかけて書き手の思考を形づくっていった言葉に迫る。米作家、メアリー・マッカーシーの自伝的作品『あるカトリック少女の追想』(若島正訳)をはじめとする収録作を眺めると「カトリック」「女性」といった底流するキーワードも浮かぶ。

 今年に入ってから、キリスト教への信仰心などをつづる若き日の詩編が新たに発見されたり、アンソロジー『須賀敦子エッセンス』(湯川豊編、河出書房新社)の刊行が始まったり。没後20年の節目を機に、日本とヨーロッパとの関係を見つめた須賀さんの仕事に改めて光が当たる。

 池澤さんは「没後20年を経てなお読者層を広げている稀有(けう)な例」と話し、その今日性を指摘する。「日本では互いを理解するという手順を踏まず、あいまいな気分や空気で物事が決まっていく。きちんと言葉をぶつけ合い、論議を尽くす-。そんなヨーロッパの思考法から生まれ育つものの意義が、今の日本では一段と増している」

 シリーズは隔月刊で、来年8月に完結する予定(1800~3200円+税)。(海老沢類)

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