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【書評】批評家、関東学院大学講師・西村幸祐が読む『1924 ヒトラーが“ヒトラー”になった年』 怪物を作り上げた秘密に迫る

『1924 ヒトラーが“ヒトラー”になった年』
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 ヒトラーの研究書は、ほとんどが1930年代の独裁政権樹立と第二次大戦中のアウシュビッツとユダヤ人迫害がテーマだ。本書が従来のヒトラー本と違うのは、タイトルが示すようにヒトラーがミュンヘン一揆に失敗、投獄された中で、あの『我が闘争』を書いた24年が、ヒトラーという怪物を作り上げた重要な時期と捉えているからだ。

 米国人ジャーナリストの著者が膨大な資料からその秘密に迫る筆致は確かである。《刑務所で過ごしていなければ政治家として再評価、再充電されることはなくドイツの支配、世界に対する戦争、ホロコーストは成し遂げられなかった》ことを歴史事実やさまざまな文献から手際よく論証。《衝動的な革命家が、権力獲得に向けた長期的視野を持つ忍耐強い政治家に変わった》秘密に迫り、その謎を解明してくれる。

 そもそも歴史事実を正確に伝えることは不可能ではないかと評者は常々考えているが、一方、現在何が起きているのか、同時代を見る方がもっと難しい。第一次大戦がドイツの敗北で終わった100年後の2018年の現在でも、世界秩序が大きく変化していることに気づく人が多くないように、同時代を見るのは過去を見ること以上に困難である。1924年の時点でヒトラーが9年後に首相に就任することを予想できた者は、少数の取り巻き以外はいなかった。ヒトラーという存在は紛れもなく時代が生んだのだが、同時代者にはそれが見えない。

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