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【書評】作家・大竹昭子氏が読む『庭』(小山田浩子著) 凝視が異界を立ち上げる

『庭』小山田浩子著
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 まずもってこれらは視線の小説群だ。目の前の出来事や対象を見つめるうちに、異次元に引き込まれていく。極度の集中力をもって見るゆえに、ごくふつうの日常のなかに異界が出現してしまうのだ。

 描写の筆は細かい。言葉が尽くされているだけでなく、文字列のビジュアルな印象もそうだ。改行がほとんどなく、括弧に入ったセリフも地の文章につなげて書かれる。文字が紙面にびっしりと敷き詰められ細密画のようだ。

 15の短編の中から「広い庭」を取り上げてみよう。少年の「僕」は広い庭のある母の友人・燿子さんのところにバーベキューに招かれる。少年の視線はまず燿子さんの風貌と着ている服にむかう。

 「ゆったりした藍色(あいいろ)の半袖シャツを着ていて、鎖骨のあたりに並んだほくろが見えた。ツヤのある顔にも髪の毛をお団子にまとめている細い首筋にもほくろはあった」

 他人のほくろを見つめてしまうことはよくある。目は意志から自律した動きをするから凝視しだすとそればかりを見てしまう。満腹になり「僕」は広い庭に出て、生えている草や昆虫に目を移す。ふと見ると不在だったはずのその家の少女が目の前にいて、裏面に細かい毛が生えた葉っぱをシャツに貼り付ける…。

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