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【話の肖像画】作家・古井由吉(4)循環する時間のありよう描く

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 〈61年には芥川賞選考委員に就任。昭和の終わりやバブル崩壊などで揺れる世相の中、平成17年までの19年間、選考の重責を担った〉

 僕が芥川賞選考の末席に加わったときは(「第三の新人」と呼ばれた)吉行淳之介さん、安岡章太郎さん、遠藤周作さんたちが長く選考に携わっていました。僕よりはだいぶ年上。当時は48歳で「こんなに若い自分でいいのか」と思ったけれど、こわばらず、人の意見をよく聞く、という心構えで臨んだのを覚えています。ただ、僕はジャッジではなくスカウト。作品の欠点には目をつぶり「コントロールは悪いけれど球が速い」といった感じで評価した。全員が反対するなかで僕だけ推した候補もいました。

 言葉なんて無用、というシグナルが色濃く出た時代です。同じ選考委員の開高健さんがあるとき、今時才能のある若い者で文学の方に来る者なんているのか-といった趣旨のことを言ったんですよ。むしろ音楽や演劇を志すのじゃないかと。

 ところがしばらくしてバブルの頃からかな、音楽や演劇の分野でもシステムがうまく回らなくなったのか、そちらから来る若い人が増えた。その極致が、音楽から来た町田康(こう)さん(12年上期に「きれぎれ」で受賞)でしょ。19年間の選考で、文学が外側に拡散していくのを感じました。

 選考委員を辞めてからですね、自分自身もすべての文学賞の候補を辞退することにしたんです。小説と随想の中間をいくような自分の小説はあくまで細々と書いているもので、大きな栄誉はふさわしくないと。そんなものもらっていたら書けなくなるという気持ちが大きかった。(聞き手 海老沢類)

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