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【話の肖像画】作家・古井由吉(1)又吉直樹さんは聡明でした

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 そしたら非常に聡明(そうめい)な受け答えをする。例えば芝居を演じるときに舞台に立つのは現実の自分であると同時に(フィクションである)作中の人物でもあるわけです。役者は作中人物の運命を知っているけれど、舞台上では知らないつもりでやらなければいけない。そういう「二重性」はお笑いも、小説を書くときも同じじゃないか、って話になった。

 話がよく通じるし、苦労していて人間知もある。ただ、「(本格的に)小説を書いたら?」とは言わなかったなあ。それは本人の運命に関わっちゃうことだから。又吉さんが発表していた掌編小説がいい、とは重ねて言いました。実際「火花」でも非常に的確な認識をさりげなく語ってますよね。

 ただね、又吉さんにとっては、お笑いとの2本立てでいくのが好ましいかもしれませんよ。お笑いの先にある俳優の道でも大成する可能性がある。両方やった方が感じることも繊細になるんじゃないかしら。いずれどちらを選ぶか、に興味はあるけど。

 若い作家には「そんなに見事な小説の出る時代じゃない」とは言っています。世間に通用する観念も多様だし、しかもそれがめまぐるしく変わる。5歳離れると話が通じなかったりするんだから。まあ、そういう心構えでいて結果的にうまくいくこともあるんです。(聞き手 海老沢類)

                   

 【プロフィル】古井由吉(ふるい・よしきち)

 昭和12年、東京生まれ。東京大学大学院独文学専攻修士課程修了。大学教員の傍ら、同人誌に小説を発表。46年に「杳子(ようこ)」で芥川賞。黒井千次、高井有一の各氏らとともに「内向の世代」と称される。58年に「槿(あさがお)」で谷崎潤一郎賞、62年に「中山坂」で川端康成文学賞、平成2年に「仮往生伝試文」で読売文学賞。昭和61年から19年間、芥川賞の選考委員を務めた。ほかの著書に「野川」「白髪の唄」など。

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