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【明治の50冊】(15)幸田露伴「五重塔」 語りの海にのまれる心地よさ

「五重塔」を収録した『小説尾花集』の表紙
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 「知の巨人」ともいわれた幸田露伴が24歳で著した代表作「五重塔」。それぞれ仏師、刀鍛冶を描いた「風流仏」「一口剣(いっこうけん)」に続く芸道小説で、自然主義文学誕生前の文壇をわかした。

 腕は確かだが、世事にうとく頑固一徹、緩慢な動作からあだ名も「のっそり」の大工・十兵衛が主人公。東京・谷中の感応寺で五重塔建立の話に、寺の普請も手がけ、塔の見積書まで出した親方筋の源太を差し置き、十兵衛が〈私にさせていただきたい〉と寺の朗円上人に直訴する。

 どちらかが主となり、2人で建てようとの源太の申し出を十兵衛は聞き入れず、潔く退いた源太が提供を申し出た下絵図や見積書も受け取らない。怒った源太の子分が十兵衛に大けがを負わせるも、〈一日なりとも仕事を休んで職人どもの上に立てるか〉と精を出す十兵衛。職人たちもこれに応えて五重塔は無事完成する。だが、落成式を前に暴風雨が塔を襲い…。

 「自作の由来」(明治30年)によれば、露伴は執筆当時、谷中に住み、朝夕目にする天王寺(旧名・感応寺)の五重塔に風情を感じていた。また、知人の倉という大工から聞いたさまざまな職人-「のっぽり」のあだ名の大工、数々の堂塔を建てた名工・越後の源太ら-の話、さらに倉も欲や処世の才はないが技術はすこぶるあり、〈倉と云(い)ふ男を幾分かモデルに〉物語を組み立てたという。

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