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【書評】『みちのく仙台常盤町 小田原遊廓随想録』千葉由香著 情と記録で掘り下げた輪郭

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【書評】
『みちのく仙台常盤町 小田原遊廓随想録』千葉由香著 情と記録で掘り下げた輪郭

『みちのく仙台常盤町 小田原遊廓随想録』千葉由香著 『みちのく仙台常盤町 小田原遊廓随想録』千葉由香著

 山場となるのは、29歳のみとり、25歳の文子、22歳の二葉、23歳の初音という4人の娼妓健康診断証が、とある貸家から見つかる場面だ。1925(大正14)年のもので、「四日ごとの検査日の欄には『無病』『通院』『入院』の判子(はんこ)が押されている」とある。そう、遊郭の中には、性病の検査と治療をするための施設、駆楳院(くばいいん)があった。娼妓が収める税金の不当な高さについても、つぶさに調べられている。その掘り下げかたに、情がある。すぐ隣にいる人の体を、大丈夫かい? と、気にかけるところからはじまるように。

 隣県、山形市小姓町にあった遊郭のエピソードも収録されている。やはり遊郭のすぐ傍(そば)で幼少時代を過ごした人は、身近な娼妓たちを「ネエサン」と呼ぶ。その響きも、耳に残る。(カストリ出版・1800円+税)

 木村衣有子(文筆家)

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