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【モンテーニュとの対話 「随想録」を読みなが〈23〉】人命第一主義に安住するな

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【モンテーニュとの対話 「随想録」を読みなが〈23〉】
人命第一主義に安住するな

大相撲春巡業宝塚場所。土俵の下で挨拶する中川智子・宝塚市長(中央)=4月6日、兵庫県宝塚市の宝塚市立スポーツセンター総合体育館(鳥越瑞絵撮影) 大相撲春巡業宝塚場所。土俵の下で挨拶する中川智子・宝塚市長(中央)=4月6日、兵庫県宝塚市の宝塚市立スポーツセンター総合体育館(鳥越瑞絵撮影)

 さらに、「伝統は大事にすべきです。でも今、時代はどんどん変わり、女性の知事、そして女性の市長も増えています。女性の総理大臣も現れるかもしれません。その時に女性は、絶対に土俵の上にのぼってはいけないのでしょうか?」と持論を述べた。何言ってんだか。女性総理のときには、男性の官房長官、官房長官も女性なら男性の副総理に代わってもらえばいいだけのことだ。そもそも協会が明治以降続けてきたしきたりを守りたいというのだから、それを認めてやればいいではないか。しきたりについて合理性や状況論でとやかく言うのは、近代人の傲慢だ。

 こんなところで引き合いに出されるのはさぞかし迷惑だろうが、30年ほど前に村上春樹さんがギリシャ正教の修道院が支配するアトス半島を旅した折に書いた言葉を思い出す。

 《僕の個人的感想を言わせてもらえるなら、女が足を踏み入れることのできない場所が世界にひとつくらいあったっていいじゃないかと思う。男が足を踏みいれることのできない場所がどこかにあったって、僕はべつに怒らない》(『雨天炎天』新潮文庫)

 「多様性を認めよ」というのが世界の趨勢(すうせい)だ。ならば、女人禁制、男子禁制も認めてしかるべきだろう。ゆこうと思えばどこへでもゆけるいまの世の中で、絶対に立ち入ることのできない場所があるというのは、むしろ幸せなことではないだろうか。私はそう思う。

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