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【書評】『消えたベラスケス』ローラ・カミング著、五十嵐加奈子訳 「画家の中の画家」の神秘

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【書評】
『消えたベラスケス』ローラ・カミング著、五十嵐加奈子訳 「画家の中の画家」の神秘

『消えたベラスケス』ローラ・カミング著、五十嵐加奈子訳 『消えたベラスケス』ローラ・カミング著、五十嵐加奈子訳

 16~17世紀中葉のスペインの文化は、世界の指導的役割を果たし、「黄金世紀」と呼ばれた。しかし、17世紀中葉になると、かつての「陽の沈むことなき大帝国」スペインの威光は霧散し、「無能王」フェリペ4世の統治下でひたすら破綻へと突き進む。黄金時代の掉尾(とうび)を飾ったのは、「画家の中の画家」といわれたベラスケス(1599~1660年)であった。

 本書によると、24歳から亡くなる61歳まで宮廷画家を務めたベラスケスは手紙、日記のたぐいはもちろん、絵画の署名もほとんど残さなかった。「肖像画の天才」ながら、自画像と称する絵もすべて贋作(がんさく)と判明。彼が埋葬されたマドリードの教会も、独立戦争でフランス軍に蹂躙(じゅうりん)され、遺骸もなくなっている。

 晩年に描いた不朽の名作『ラス・メニーナス(女官たち)』に登場する画家がベラスケス本人とされるが、生身の人間としての痕跡は、まさに「消えたベラスケス」である。本書では、美術評論家の著者が2つのプロット-ベラスケスの生涯と、彼の絵の虜(とりこ)になった男の数奇な人生-を掘り起こし、不即不離の関係で展開している。

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