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【書評】文筆家・木村衣有子が読む『原発事故と「食」 市場・コミュニケーション・差別』五十嵐泰正著 やっと出た平らかな「視座」

『原発事故と「食」 市場・コミュニケーション・差別』五十嵐泰正著
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 社会学者の五十嵐泰正さんは、千葉県柏市に長く暮らし、ルポルタージュ『みんなで決めた「安心」のかたち ポスト3・11の「地産地消」をさがした柏の一年』を2012(平成24)年末に上梓(じょうし)している。その柏での実感を重ねながらも、当事者としてではなく、フラットな視点で書かれている。

 福島県産の食べものは、どの時期に最も買い控えられ、今はどれだけ流通しているのか。たとえば、10年には生産量全国2位を誇ったさやいんげん、同じく3位だったきゅうりは、それぞれ異なる経緯を辿(たど)り、明暗が分かれているとある。「風評被害」は、これまで栽培されてきた野菜、果物、白米、獲られてきた魚の上に、全く同じかたちでのしかかっているわけではないのだった。それに、時が経(た)つごとに「風化」もしていく。それらを11年からずっと避け続けている人の割合は、昨年の消費者庁の調査ではもはや15%に満たない。とはいえ「意識して福島県産品を避けているわけではないが、うっすらと悪いイメージが残っている」人も少なくない。その状態を五十嵐さんは「悪い風化」と呼ぶ。

 そう、2011年の残像を、一瞬で消し去る魔法はない。

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