産経ニュース

【大学ナビ】「日本版NCAA」始動へ 大学スポーツに明治以来の改革

ライフ ライフ

記事詳細

更新

【大学ナビ】
「日本版NCAA」始動へ 大学スポーツに明治以来の改革

小林至・江戸川大学教授 小林至・江戸川大学教授

 ■キーマン・小林至教授に聞く

 現在進行形の「高大接続改革」とならぶ「明治以来の改革」になるかもしれない。現在、スポーツ庁を中心に創設が議論されている「日本版NCAA」(仮称)のことである。同庁によると、「大学スポーツの振興」を目的とする「大学横断的かつ競技横断的統括組織」。来年度中にも発足する、というのだが、ある関係者に言わせると、「小さく産んで大きく育てる」。どうも分かったような分からないような…。そこで創設議論の中心にいる小林至・江戸川大学社会学部教授を訪ねた。(編集委員 関厚夫)

 「いま、日本のスポーツ史にとって非常に重要なことに携わっている-。日本版NCAA創設についての議論が深まるに従ってそう確信するようになりました」

 千葉県流山市にある研究室。小林教授は言葉に力を込めた。

 研究者としてだけでなく、東大出身の元プロ野球投手として、また福岡ソフトバンクホークスの取締役を務めていたことでも知られる小林教授は現在、「日本版NCAA創設に向けた学産官連携協議会」のマネジメントワーキンググループ(WG)座長でもある。

 「わかりやすくいうと日本版NCAAとは大学スポーツの業界団体です。経済界には経団連、高校スポーツには高体連、プロ野球にはNPBがあるが、大学スポーツにはない。このほうがむしろ不思議なのかもしれません」

 学産官連携協議会は「マネジメント」のほか、「学業充実」「安全安心」の各WGで構成されている。この3つの名称はそのまま日本版NCAAの理念や課題に直結しているテーマでもある。

 「あえて優先順位をつければ『安全安心』『学業充実』『マネジメント』でしょうか。特に『安全安心』については待ったなしということで、各大学は共通認識を持っていると思います。とはいえこれらのテーマは三位一体。『安全安心』や『学業充実』を実現するためには組織や体制づくりが不可欠であり、その維持には資金が必要となります。と同時に、使命の一つである大学スポーツの活性化や振興をはからねばならない。それらをカバーするのが『マネジメント』だといえるでしょう」

 先月30日、明治大学が駿河台キャンパスで開催したマスコミ交流会。「大学スポーツの未来」の題で基調講演を行ったスポーツ庁の鈴木大地長官は日本版NCAAについてふれ、創設の意義について強調した。

 同庁によると今後、「学業充実」と「安全安心」の各WGの議論を小林教授が座長を務める「マネジメント」WGが引き継ぎ、来月までに「具体的な事業や組織等を含めた日本版NCAAの骨子案」をとりまとめる。これを受け、すでに一部大学で導入を決めているアスレチックデパートメント(スポーツ部局)の設置やその運営を担う人材「スポーツアドミニストレーター」の育成などの動きが加速されるとみられる。

 しかし、大学スポーツについては横断的な組織よりも「自治」を重んじる伝統があり、運動部(体育会)活動は学生やOBを中心とした「自主的・自律的な課外活動」とされ、大学の関与が限られている場合も多い。また、100年余の歴史をもち、非営利団体ながら約1千億円の収入があるとされるNCAA(全米大学体育協会)には現在、約1100校が加盟しているが、黒字はわずか20校前後。「アメリカンフットボールやバスケットボールに人気が集中しすぎている」という指摘があるほか、商業主義への懸念を口にする日本の大学トップもいる。

 「スモールスタート。まずはできるところから始めたい」(スポーツ庁)という日本版NCAAだが、高性能の「日本製改良版」として、寄せられる期待は大きい。小林教授は語る。

 「いま、時代は確実にガバナンス(管理運営システム)とコンプライアンス(法令順守)を求めており、日本版NCAAはそれに応えるものです。さらに日本版NCAAが、大学とOB組織を含めた運動部との橋渡し的な役割を担ってゆくことを期待しています」

「ライフ」のランキング