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【話の肖像画】漫画家・矢口高雄(5)文化遺産であるはずの原画を散逸させたくない

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【話の肖像画】
漫画家・矢口高雄(5)文化遺産であるはずの原画を散逸させたくない

昨年10月、秋田空港の「釣りキチ三平」のレリーフ除幕式で。左はちばてつやさん、右は里中満智子さん (本人提供) 昨年10月、秋田空港の「釣りキチ三平」のレリーフ除幕式で。左はちばてつやさん、右は里中満智子さん (本人提供)

 〈秋田県増田町(現・横手市)に働き掛けて、平成7年に横手市増田まんが美術館が開館した〉

 漫画家になろうと30歳で銀行員を辞めたとき、「何か不祥事を起こしたのでは」と陰口を言われたほど、漫画の地位は低かったんです。でもその後、売れっ子になり、エッセーと漫画が教科書に採用されたことで「漫画の地位をここまで上げた」という自負が僕にはあり、美術館で街おこしに貢献したい気持ちもあった。ただ開館から20年以上たち、今は海外に向けて、クールジャパンの漫画文化を発信し、外国人観光客が多く訪ねる施設になってほしいと思います。現在休館中で、31年4月にリニューアルオープンします。今後はインターネットなどでの外国語による発信も必要になるでしょう。

 漫画の原画を保存するアーカイブ機能も持たせたいですね。そのために自分の原画、約4万5千枚を寄贈しました。文化庁の補助金も活用して、原画収納と高解像度のデジタル保存の作業が約3年かかってほぼ終了した。ゆくゆくは政府が「国立漫画美術館」のような施設を造り、その分館として原画を収蔵、展示したり、再版の際に資料を提供する役割を果たしてほしいとも思います。

 原画の扱いは漫画家にとって共通の悩みです。かつて「印刷に供する版下」にすぎなかった原画は、漫画の文化的地位が上がり、相続税対象となる可能性が出てきました。団塊の世代の前後の漫画家は、大量の原画の収納場所と相続税対策、今後、誰に管理を委ねるかで悩んでいる人が少なくない。ある巨匠が亡くなった際、家族の借金のカタに銀行が原画を押収しようとしました。金に困ってファンに売ったり、捨てたりした漫画家もいるという。江戸時代の浮世絵が海外に流出したように、貴重な文化遺産であるはずの原画を散逸させたくありません。

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