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【話の肖像画】漫画家・矢口高雄(4) 「やったぜ」作品が教科書に

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【話の肖像画】
漫画家・矢口高雄(4) 「やったぜ」作品が教科書に

 〈「ボクの学校は山と川」「ボクの先生は山と川」の2つのエッセー集から「カジカの夜突き」「バチヘビ始末」「弟の死」など10編ほどが小、中、高校の国語や道徳の教科書に採用された〉

 昭和61年秋、白水社(東京)の編集者がアトリエに来て、「少年時代に山や川で遊んだ思い出を文章でつづってほしい」と依頼してきた。子供たちがゲームに夢中で、自然に親しむ機会が少なくなっているから、という説明でした。

 やってみようか、と書き下ろしたのが62年に出した「ボクの学校は山と川」です。評判となり、教科書に載せたいとの依頼が相次いだ。イラストは僕の漫画を使ってもらった。「害虫」と批判された漫画が教科書に載る。「やったぜ」と思ったね。「目の前に情景が浮かぶ」とよく言われます。漫画のコマ割を思い浮かべながら文章を書くからでしょう。

 〈「釣りキチ三平」の連載を再開した〉

 「釣りキチ三平」の連載は10年続けて58年に終えました。最終話では三平の祖父の一平が死去し、村で盛大な野辺送りをする「釣友葬」の様子を描いた。天涯孤独となった三平の涙、土葬の風習など、人の死にまつわる一部始終を描くことで、命の大切さを伝えたかった。ラストは三平たちが「釣りキチ同盟」を作り、魚の釣れる自然保護を訴えて国会に請願に行く。もう未練はありませんでした。

 平成12年に、漫画家生活30周年の祝賀会を秋田県湯沢市で開いてもらいました。ちばてつやさん、里中満智子さんといった仲間たちが「そろそろ三平君にまた会いたいね」と言ってくれた。改めて考えた。「子供は冒険して新しいものを見つければいい」という叫びが僕にはあり、三平の釣りを通じて伝えていた。でも、それが平成になっていくつ実現したか。子供は塾や習い事に追われ、親は危ないからと川には近寄らせない。自殺も多い。ならば再び三平のワクワクした冒険を描いて振り払おうと、「平成版」として連載を再開しました。

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