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【書評】作家・明野照葉が読む『小説の言葉尻をとらえてみた』飯間浩明著 辞典編纂者が導く出合い

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【書評】
作家・明野照葉が読む『小説の言葉尻をとらえてみた』飯間浩明著 辞典編纂者が導く出合い

『小説の言葉尻をとらえてみた』 『小説の言葉尻をとらえてみた』

 著者は『三省堂国語辞典』の編集委員。本書は、現代小説の中に、新しい語、新しい用例を求め、ともに“ことば探しの旅”に出ましょうという趣向だ。対象は『桐島、部活やめるってよ』『オレたちバブル入行組』『八日目の蝉(せみ)』など全15作品。

 旅だから、いちいち「これは誤用ではないか」とあげつらうようなことはない。作品にどっぷりと入り込み、時に登場人物に話しかけ、たとえば池井戸潤作品では金融業界の用語と解説を喜々として書き留めたりと、目を惹(ひ)く用語との出合いを楽しんでいる。

 「瞼(まぶた)が煮えつく」という表現に出合えば、明治、江戸……と用語例を遡(さかのぼ)った上で、作者独自の表現と受け入れているし、「愛想を振りまく」も誤用とされがちだが、100年前から実例があるのを確認して、今も元気にしていると喜んでいる。

 過去の用例に加え、現在を含めた使用頻度によって、「赤丸急上昇」のように廃れた言葉もあれば「目力」のように十数年で定着した言葉もあるとしていて、つくづく言葉は生き物だと思わされる。一方、「言を翻す」は使用例は少なくても、芥川龍之介が使っているので俄然(がぜん)力を持つとしているのも面白い。

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