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【寄稿】作家・澤田瞳子 「怖い絵」展 己の中の恐怖と向き合う

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【寄稿】
作家・澤田瞳子 「怖い絵」展 己の中の恐怖と向き合う

作者不詳(フランス派)「マリー・アントワネットの肖像」18世紀 ボルドー美術館蔵(c)Musee des Beaux-Arts, Mairie de Bordeaux. Photo F. Deval 作者不詳(フランス派)「マリー・アントワネットの肖像」18世紀 ボルドー美術館蔵(c)Musee des Beaux-Arts, Mairie de Bordeaux. Photo F. Deval

 「恐怖」という感情は、非常に複雑で多彩である。そして人間は天災を恐れるがゆえに家を建て、町を作り、病を恐れるがゆえに医学を発展させた。つまり人類の文明とは、「恐怖」に追われることによって、発達してきたのである。そして、兵庫県立美術館に続き上野の森美術館で開催されている「怖い絵」展を訪れれば、その感情が芸術にも多大なる深みを添えてきたことに、誰もが驚嘆するだろう。

 本展ではドイツ文学者で作家の中野京子氏が「恐怖」をキーワードに監修した絵画約80点が出陳されているが、目玉作品とも呼ぶべきポール・ドラローシュ作「レディ・ジェーン・グレイの処刑」は、一見しただけでは、何を描いた作品かよく分からないかもしれない。真っ白な服を着た若い女性は目隠しをされ、傍らの司祭に導かれて小さな台に手を伸ばしている。

 見る者はまず、その気高いまでの美しさに目を奪われよう。だが2人の傍らに立つ男が巨大なオノを手にしており、彼女は今、自らの首を置く台を探していると気づいたとき、先ほどの詠嘆は途端に恐怖へと変わる。そしてそんな光景を「美しい」と思ってしまった過去の自分にも、観者は言葉にしがたい不気味さを感じるはずだ。

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