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【書評】伝承から迫る当時の価値観 『ヤマトタケル 日本人なら知っておきたい英雄』産経新聞取材班著

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【書評】
伝承から迫る当時の価値観 『ヤマトタケル 日本人なら知っておきたい英雄』産経新聞取材班著

 日本の神話に登場するヒーローたちの中でも、ヤマトタケルノミコト(倭建命、日本武尊)は飛び抜けた存在感を持っている。彼が制圧したとされる土地は九州から関東までの広範囲に及ぶ。大和王権の勢力拡大の歴史が、個人の武勇伝に置き換えられて定着した英雄像、それがヤマトタケルだと思われる。

 しかし、本書に詳しく書かれているように、この物語が定着しつつあった時代にすでに「日本人好み」の感性が培われていたことに驚く。ヤマトタケルの人生は--。

 一、ハイティーンの頃、父の意向をくんで父に従わぬ兄を殺したため、父にその過激な性格をおそれられて「制圧」という名の死出の旅へ追いやられる。ここに父と子の悲しいすれ違いがある。

 二、それでも父の期待に応えようと必死で働く。父からは最小限の兵士しか与えられない。まるで「死ね」とばかりに…。

 三、彼が危機に陥ったとき、必ず女性の力により助けられる。

 四、自分を助けるために愛する女が死ぬ。

 五、精いっぱい役目を果たすが、神の怒りを買ったため帰郷途中で死ぬ。

 誤解され、愛され、愛するものを失い、それでも最期まで父と故郷を思う。

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