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【話の肖像画】ドイツ文学者・中野京子(1) 本物を見なくちゃ分からない

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【話の肖像画】
ドイツ文学者・中野京子(1) 本物を見なくちゃ分からない

中野京子さん(川口良介撮影) 中野京子さん(川口良介撮影)

 主題はピエタなので、十字架から降ろされたイエスの亡きがらを抱くマリア、ヨハネ、マグダラのマリアの4聖人が描かれているのですが、なぜか左端に「変なおじさん」がいる…。光輪がないから、世俗の人です。

 一瞬、自分の記憶を疑いました。おじさんの存在や間延びした画面が嫌で、無意識に記憶から消したのだろうかと。帰国後、改めてこの絵を掲載した美術書を探したら、ばっさり左端がカットされていた。ああ、この編集者も「いらない」と思ったのかな、とおかしくなって…。でも本当は、左端の男は重要なんです。お金を払ってこの礼拝図を寄進した、注文主ですから。

 「怖い絵」展でも、日本初公開の名画「レディ・ジェーン・グレイの処刑」を見た方々から、「想像以上の大きさ、迫力でびっくりした」といった感想を多くいただいています。やはり、本物を見ないといけませんね。(聞き手 黒沢綾子)

【プロフィル】中野京子 なかの・きょうこ 北海道生まれ。早大大学院修士課程修了。ドイツ文学者・作家として主に美術や西洋史にまつわるエッセーを数多く執筆し、雑誌や新聞に連載。主な著書に「怖い絵」「名画の謎」シリーズ、「『絶筆』で人間を読む」「残酷な王と悲しみの王妃」など。美術全集「ART GALLERY テーマで見る世界の名画」(全10巻)を監修。最新刊は「名画で読み解く イギリス王家12の物語」。

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