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谷崎賞に松浦寿輝さん「名誉と恍惚の中にいます」 中公文芸賞に森絵都さん「血の通った教育が書けた」

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谷崎賞に松浦寿輝さん「名誉と恍惚の中にいます」 中公文芸賞に森絵都さん「血の通った教育が書けた」

松浦寿輝さん(左)と森絵都さん 松浦寿輝さん(左)と森絵都さん

 第53回谷崎潤一郎賞と第12回中央公論文芸賞(ともに中央公論新社主催)の贈呈式が11日、東京都内であり、受賞した作家2人が喜びや抱負を語った。

 松浦寿輝さん(63)の谷崎賞受賞作『名誉と恍惚』(新潮社)は、日中戦争さなかの上海共同租界を舞台に、日本人警官の転落と彷徨(ほうこう)をつづる。原稿用紙で約1300枚に及ぶ大作は、「純然たる言葉だけで『上海の幻』を描ききった。言葉でできた工芸品のよう」(選考委員の堀江敏幸さん)と絶賛された。

 「(周囲で)かなり過酷な戦いが繰り広げられる中、上海自体はぽっかり真空地帯のようになっていた。その時期を舞台に書かれた小説はあまりなかった」。昭和10年代前半の上海租界に目を向けた理由を明かした松浦さん。中国への渡航経験がある谷崎潤一郎の歩みに触れながら「上海と縁があった谷崎の名が冠された賞をいただき『名誉と恍惚』の中にいると感じております」と結び、会場を沸かせた。この作品は今年のドゥマゴ文学賞にも選ばれており、松浦さんは翌12日には同賞の贈呈式にも出席。連夜の祝宴となった。

 中央公論文芸賞に選ばれたのは森絵都さん(49)の『みかづき』(集英社)。昭和から平成にかけての学習塾業界を舞台にしたある一家の奮闘記は「誠実で緻密な文体は教育を表現するのにぴったり」(選考委員の林真理子さん)と評された。

 森さんは「最初は小説の素材でしかなかった『教育』が、だんだん熱を帯びて血の通ったものになっていった気がする。一作一作を大事に、たくさんの長編を残したい」と決意を語った。(海老沢類)

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