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【書評】「食と性」生々しくも悪趣味でなく 『性食考』赤坂憲雄著

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【書評】
「食と性」生々しくも悪趣味でなく 『性食考』赤坂憲雄著

『性食考』赤坂憲雄著(岩波書店・2700円+税) 『性食考』赤坂憲雄著(岩波書店・2700円+税)

 いま一つは、必ずしも明示されないが日本の内なる中央(「都」)と東北、である。飢饉(ききん)と貧困、野生と動物性が、みちのくイメージと結びついている。それを体現するのはまずもって宮沢賢治、そして『遠野物語』や菅江真澄の見聞録だ。東日本大震災が、この対立軸をさらに顕在化した。

 こうした座標の上に、さまざまな文学作品や絵本や映画、学説などが採り上げられ、交わること・食べること・殺すこと・愛することが、互いに不可分であるという思索が繰り広げられる。

 糞(ふん)と尿、穴とヴァギナ、殺害と生殖…あつかうテーマの都合上、生々しい描写や記述も少なくない。しかし人間の本質はそうした動物性にこそ求められる、と考える著者は、混沌のただなかに、まっすぐに眼を凝らす。それでいて悪趣味に陥っていないのは、都会的に洗練された文体のゆえでもあろう。

 とりあえず、おそろしく鋭い問題提起がなされたのは間違いない。無数のトピックがちりばめられた好著である。(岩波書店・2700円+税)

 評・山田仁史(東北大学大学院准教授)

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