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【書評】「食と性」生々しくも悪趣味でなく 『性食考』赤坂憲雄著

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【書評】
「食と性」生々しくも悪趣味でなく 『性食考』赤坂憲雄著

『性食考』赤坂憲雄著(岩波書店・2700円+税) 『性食考』赤坂憲雄著(岩波書店・2700円+税)

 タイトルを見た瞬間、やられた、と思った。食と性とがパラレルであることに、私も興味を抱いていたからだ。

 個体(ないしは遺伝子)による自己保存への欲求こそが食欲であり、自己複製へのそれが性欲だろうという見通しを、私なりに抱いている。そして僧侶に肉食と妻帯を禁じたごとく、両者を制限する現象が、宗教にはしばしば見られる。それは宗教という制度が、ヒトの肉体に縛られる状態から離れ、限りなく純粋な精神へ近づこうという、いわば浮世を超えた指向性をもつことにもつながっていよう。

 こんなビジョンを個人的に描いていた矢先だったので、先を越されたか、と焦った。本書の内容と形式は、私のめざすものとはありがたくも隔たっていたが、幾度もうならされたことを告白する。

 著者の脳裏には二つの対立軸があるらしい。一つは西洋と東洋、あるいは西欧と日本という対立である。異類婚姻譚(たん)を論じつつ、動物と人間の性・食関係のありかたが東西で大きく違う、と説くあたりに、この軸が現れている。

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