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【書評】拓殖大学学事顧問・渡辺利夫が読む『山頭火意外伝』井上智重著 漂泊の句人を受け入れた人々

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【書評】
拓殖大学学事顧問・渡辺利夫が読む『山頭火意外伝』井上智重著 漂泊の句人を受け入れた人々

『山頭火意外伝』 『山頭火意外伝』

 本書の著者は熊本日日新聞社で働きながら熊本の近代文学の研究に携わってきたジャーナリストである。山頭火の生涯を、多くの山頭火論では触れられることがなかった資料を駆使しながら執筆した実に真摯(しんし)なる評伝である。山頭火は衝かれるように歩き、ただ歩いた句人であり、途中で会う人に酒を奢(おご)らせ借金をし、また酒、酒、酒の破滅型の人生であった。しかし、どこへいってもこの男を見捨てる者はいない。自由律の句人としてすでに名をなしていたがゆえの配慮もあろうが、人々を惹き付ける愛嬌もあったのに違いない。

 行乞漂泊をつづける人間を寛容に受容する共同体がまだ全国のそこここにあった戦前期の日本に生きた句人の物語でもある。(熊本日日新聞社・2000円+税)

 

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