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【新・仕事の周辺】穂村弘(歌人) 「仕事」の歌あれこれ

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【新・仕事の周辺】
穂村弘(歌人) 「仕事」の歌あれこれ

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世の人に背中を見せる仕事あり指揮者・教員・消防士など 丹羽利一

 そういう切り口で「仕事」を見たことがなかったけど、云われてみれば「指揮者」なんて完璧にそうだ。だから、演奏が終わって振り向くと、なんかときめく。視点の取り方で、世界の見え方が変わることに気づかされた。

退職の翌日会社のそばへ行き喫茶店にてコーヒーを飲む 磯田清

 作者の気持ちが一切書かれていない。だからこそ、想像の余地がある。何十年も毎日通っていた「会社」に、或る日を境に急に行かなくなるのは心と体に悪い。だから、「退職の翌日」は「会社のそば」の「喫茶店」まで行ってみた。と考えてみたんだけど、どうだろう。

「外すごく寒かったんですね」と耳たぶに触れて美容師仕事始める 石田恵子

 他人の「耳たぶ」に触れる職業は珍しい。「美容師」はそうやって「外」の寒さを知るものなのか。触覚によるコミュニケーションだ。

「60点。」背中洗えば介護士の男に批評されるホテルで 玉谷ともみ

 「背中」の洗い方が「60点」ということなんだろう。男女のプライベートないちゃいちゃ空間に、突然割り込んできた「介護士」としてのプロ目線が面白い。

                   

【プロフィル】穂村弘

 ほむら・ひろし 昭和37年、札幌市生まれ。上智大学英文学科卒。平成2年、歌集『シンジケート』でデビュー。20年、短歌評論集『短歌の友人』で伊藤整文学賞、今年9月『鳥肌が』(PHP研究所)で第33回講談社エッセイ賞を受賞。評論、エッセー、絵本、翻訳などでも活躍し、歌集『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』、詩集『求愛瞳孔反射』、絵本『あかにんじゃ』、エッセー『絶叫委員会』など著書多数。

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