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【書評】編集者、ライター・月永理絵が読む『夫婦の中のよそもの』エミール・クストリッツァ著、田中未来訳 まさに映画の一場面が次々

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【書評】
編集者、ライター・月永理絵が読む『夫婦の中のよそもの』エミール・クストリッツァ著、田中未来訳 まさに映画の一場面が次々

『夫婦の中のよそもの』エミール・クストリッツァ著、田中未来訳(集英社) 『夫婦の中のよそもの』エミール・クストリッツァ著、田中未来訳(集英社)

 『アンダーグラウンド』や『黒猫・白猫』で知られるセルビアの映画監督、エミール・クストリッツァの初の小説集。6編の短編のうち、4編は、1970年代のサラエボを舞台にした少年、アレクサの連作。大臣の補佐官を務める父親と、リウマチ持ちで海辺での生活を夢見る母親との間で育ったアレクサは、周囲の大人たちを観察しながら成長していく。

 小説は、いかにもクストリッツァらしい描写に満ち溢(あふ)れている。個性的な登場人物、空を飛ぶ人々や動物との奇妙な交流。こうした描写を文字で読むことで、彼の映画がどう成り立っているのかがよくわかる。

 たとえば「すごくヤなこと」での、バスタブを泳ぐ巨大な鯉(こい)と少年の会話風景など、まさにクストリッツァ映画の一場面そのもの。アレクサ少年シリーズでは、大酒飲みの父親のとぼけた言い訳や、従兄(いとこ)のネドとロマ娘との激しくコミカルな性交場面、酒場でのドタバタな乱闘場面など、ファンにはたまらない場面ばかり。ジプシー音楽と狂わんばかりに踊りまくる人々の様子が、目に浮かぶようだ。

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