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【書評】モラロジー研究所教授・西岡力が読む『天皇の平和 九条の平和』小川榮太郎著 「天皇伝統が全体主義を排除してきた」

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【書評】
モラロジー研究所教授・西岡力が読む『天皇の平和 九条の平和』小川榮太郎著 「天皇伝統が全体主義を排除してきた」

『天皇の平和 九条の平和』小川榮太郎著 『天皇の平和 九条の平和』小川榮太郎著

 読み終えて、タイトル「天皇の平和 九条の平和」の意味がわかり、うーんと唸(うな)らされた。教えられることが多い本だが、小川氏が「天皇の平和」という語をタイトルに入れた意味について論じたい。

 小川氏は、日本はいま全体主義化の危機に直面していると主張し、その危機を乗り切るためには原理的な確認が必要だとしてこう書く。

 「天皇伝統こそが、日本社会の自由を擁護し、成熟させ、逆に全体主義の危険を排除する最大の歴史的条件だった」「権力でない存在が、日本の国柄と秩序の侵し難い最上位にあり続けた…これこそが、他の文明圏と決定的に異なる日本独自の安定と自由の源泉でした」

 安倍晋三首相は第1次政権以来今に至るまで、価値観外交を掲げてきた。自由、民主、人権、法の支配、市場経済などの価値観を人類普遍のものとして、その拡大強化を図る外交だ。しかし、世界情勢を見ると、冷戦終了後、一時優勢になるかと思われた普遍価値観が、ポピュリズムを背景とする全体主義に次第におされてきた。私の専門領域の韓国が属する儒教文化圏でも普遍価値観は苦戦している。韓国では開発独裁がおわり民主化が進んだが、朴槿恵(パククネ)前大統領の弾劾プロセスは北朝鮮とつながる左派全体主義勢力による人民裁判というべきもので、普遍価値観から大きくかけ離れていた。

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