産経ニュース

【話の肖像画】建築家・安藤忠雄(2)1カ月でライセンス取得、17歳でプロボクサーデビュー

ライフ ライフ

記事詳細

更新

【話の肖像画】
建築家・安藤忠雄(2)1カ月でライセンス取得、17歳でプロボクサーデビュー

プロボクサーだったころの安藤忠雄氏=昭和33年 プロボクサーだったころの安藤忠雄氏=昭和33年

 工業高校に進学しましたが、早く稼いで生活の面倒をみなければと考えていた。一足早くプロボクサーになっていた双子の弟、北山孝雄の影響もあり、近所のボクシングジムをのぞいたんです。4回戦ボーイの練習風景を見て「大したことないな」と思った。月給1万円の時代に、4回戦のファイトマネーは4千円。何より、ケンカして4千円稼げるなんて、こんないい話はない。1カ月でライセンスを取り、17歳でプロボクサーとしてデビューしました。階級はフェザー級。10回ほど試合をして6回戦までいきましたが、1年半くらいでやめました。

 というのも、のちに世界王者として2階級を制覇したファイティング原田さんがある日、ジムに練習に来たんですよ。衝撃だった。驚異的な回復力など、身体能力がケタ違い。「これはあかん、人間には向き不向きがある」と思い知りました。

 〈建築家を志した背景には、中学時代に出会った2人の大人の存在があるという〉

 中学2年のとき、祖母が平屋の家を2階建てに改築したんです。来てくれたのは近所の若い大工さん。昼食もとらず、持参のパンをかじって一心不乱に働く姿を見て、この人は仕事に誇りを持っているなと感じた。おぼろげに建築の仕事に憧れたんです。

 もう一人は中学の数学の先生。先生は通常授業だけでなく、自ら選抜した生徒を集めて毎朝、特別授業を行った。成績が悪い私もなぜか呼ばれた。熱血指導で、教室はいつも緊張で張り詰めていた。知識の詰め込みだけでなく、数学には想像力が必要だということが分かり、これは面白いと感じた。

 先生はよく「数学は美しい」とおっしゃった。当時はあまりよく理解できなかったが、数学の美学は建築にも通じる。

 仕事熱心な大工さんと、情熱あふれる数学の先生。この2人に出会わなかったら、私は建築家にならなかったでしょう。(聞き手 黒沢綾子)

関連ニュース

「ライフ」のランキング