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【話の肖像画】建築家・安藤忠雄(1)東京で乱立するオフィスビルは快適かもしれないが、心の中に残るだろうか

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【話の肖像画】
建築家・安藤忠雄(1)東京で乱立するオフィスビルは快適かもしれないが、心の中に残るだろうか

安藤忠雄さん(宮澤宗士郎撮影) 安藤忠雄さん(宮澤宗士郎撮影)

 6月下旬にフランス・パリで記者会見をしました。パリ中心部にある歴史的建造物「ブルス・ド・コメルス(商工会議所)」を改修し、現代美術館に再生させるプロジェクトについてです。もともと18世紀に穀物取引所として建てられ、市民に愛されてきた直径70メートルの円形ドームの建物。その内部にコンクリートの円筒を挿入し、展示スペースにします。建物の内外を修復するとともに、空間を再構成し、現代アートのための場とする。古今が融合する空間になると思います。

 〈地元大阪を拠点に半世紀近く設計活動をするが、仕事は世界中に拡散している。今、自らの建築事務所の収入の約8割は、海外のプロジェクトによるものという。中でもパリの美術館計画は、新しい観光名所として地元の熱い期待が寄せられている〉

 美術館への再生計画は、パリ市が仏資産家でアートコレクター、フランソワ・ピノーさん(81)の財団に50年間、建物の使用権を貸与することで実現しました。展示されるのはピノーさんが収集した屈指の現代美術作品。ルーブル美術館とポンピドゥー・センターの間という好立地ですし、昨今テロの影響などで観光客数が減少してますから、パリ市も「早いオープンを」とせかしてくる。既に工事は始まっていて、再来年の初頭に開館予定です。

 建築に宿る「命」を後世につなぐ。発想の原点は昭和60年代に考えた、大阪・中之島にある中央公会堂の再生案です。大正時代、気骨ある一人の実業家の寄付金で建てられた、市民の誇りというべき建物。老朽化で建て替えが検討されていると聞き、誰に頼まれるでもなく私が考えたのが、外観と構造はそのままに、内部にコンクリートの卵形ホールを挿入する案でした。古い建物が卵を抱えるように、おじいさんが孫を抱くように、古いものと新しいものが共存できないか。幼い頃から公会堂を見て育った者としては、どうしても残したいと思ったのです。

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