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【編集者のおすすめ】“光の魔術師”と“微生物学の父”の友情 感動のアートミステリー『フェルメールの街』櫻部由美子著

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【編集者のおすすめ】
“光の魔術師”と“微生物学の父”の友情 感動のアートミステリー『フェルメールの街』櫻部由美子著

『フェルメールの街』櫻部由美子著 『フェルメールの街』櫻部由美子著

  美しく謎めいた作品の数々で、観(み)る者を魅了する“光の魔術師”フェルメール。彼が暮らしたオランダの港町デルフトで、彼と同じ年に生まれた人物に、アントニー・レーウェンフックがいます。商人として生計をたてながら独学で顕微鏡による研究を続け、のちに“微生物学の父”と呼ばれる科学者です。フェルメールの死後、その遺産管財人に任命されており、絵のモデルを務めたとも言われます。

 同じ年、同じ街に生まれ、異なる人生を歩んだ2人。本書は、今から400年前のデルフトに生きた彼らの友情をたどる感動のミステリーです。

 物語は、隣の都市で画家の内弟子修業を終えた若きフェルメールが故郷へと戻ってくるところから始まります。その頃、陶器の名産地として知られるこの街では、陶工たちが行方不明に--。

 ページをめくれば、17世紀オランダの街の活気や、そこに息づく人情が鮮やかに広がります。絵画表現を追求するフェルメールが、あの光の表現に至る瞬間は美しく、名場面の一つ。明晰な頭脳と持ち前の好奇心で道を開くレーウェンフック、フェルメールの悪妻とも言われるカタリーナの真実…。温かなリアリティーで描き出される登場人物たちも魅力です。

 著者は、2015年の角川春樹小説賞受賞作『シンデレラの告白』で、誰もが知るあのおとぎ話を切なく美しい大人のミステリーに翻案し、熱烈な支持を集めました。注目の受賞後第一作。芸術の秋に、ぜひお楽しみください。(角川春樹事務所・1400円+税)(角川春樹事務所 三輪侑紀子)

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