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【編集者のおすすめ】孤独な老人ならば人生は豊かになる 『孤独のすすめ 人生後半の生き方』五木寛之著

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【編集者のおすすめ】
孤独な老人ならば人生は豊かになる 『孤独のすすめ 人生後半の生き方』五木寛之著

『孤独のすすめ 人生後半の生き方』五木寛之著 『孤独のすすめ 人生後半の生き方』五木寛之著

 著者の五木寛之さんは今月85歳の誕生日を迎えます。51年前のデビュー以来第一線で活躍し、現在も連載を多数抱え、全国に講演に出かけ…。「老いの不安」とは無縁に思える五木さんですが、「アンチエイジング」という言葉に疑問を呈します。元気な100歳、新しいことに挑戦し、孫に囲まれる前向きな老後。こうした「理想の老後」に縛られ、苦しんでいる人があまりにも多いのではないかと。

 五木さん自身、老いに抗(あらが)わず、といって過剰に恐れず、肉体の変化を日々面白がりつつ「嚥下(えんげ)」や「起立」といったテーマを設け、体と向き合っているそうです。気分が沈むときには、自らの記憶を咀嚼(そしゃく)する「回想」も効果があると本書では語られます。人に話して「またその話」と嫌がられるなら、自分だけで味わえばいい。年を重ねるほど、思い出の抽斗(ひきだし)は多いはず。昔を振り返ることは悪くない。この言葉は目からうろこで、勇気付けられたという読者の声もたくさんいただきました。

 車をこよなく愛しながら、60代半ばで自身の変化に気づき、運転を「卒業」した五木さんが提唱する人生のシフトダウン-精神活動は高めながらも減速すること-こそが、今の時代の理想の老後ではないでしょうか。「あなたは孤独な老人ですか? それなら人生は豊かになります」というメッセージは幅広い読者に届き、発売1カ月半で12万部を突破しました。どんな立場の人の老いにも寄り添える、そんな一冊だと考えています。(中公新書ラクレ・740円+税)(中央公論新社特別編集部兼『婦人公論』編集部・川口由貴)

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