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【国語逍遥(88)】絵解き 伝統の「語り芸」に酔った 清湖口敏

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【国語逍遥(88)】
絵解き 伝統の「語り芸」に酔った 清湖口敏

 大阪市内の小学校に通った私は6年の夏、林間学舎で初めて高野山(和歌山県)に登った。そこでお坊さんから聴いた「苅萱道心(かるかやどうしん)と石童丸(いしどうまる)」の物語は、あまりにも悲しくて、目にたまった涙を友達に気取(けど)られまいと慌てたことを、今でもはっきりと覚えている。

 その林間学舎から半世紀余を経たこの夏、同じ物語を再び聴く機会があった。信濃(長野県)の善光寺にほど近い西光寺の副住職夫人、竹澤環江さんによる「絵解き」の“出張”口演が、東京都内の大学ホールで催されたのである。

 絵解きとは、高僧の絵伝や寺社縁起絵、地獄絵などの掛幅(かけふく)絵を聴衆に示し、絵の内容や意味を解説するものである。物語と絵、語りの3つが一体となった、さしずめ視聴覚説教といったところだろうか。もともとは仏教教化(きょうけ)が目的だったが、鎌倉時代あたりから芸能化していき、江戸の頃には庶民の娯楽の一つでもあったという。

 この日、竹澤さんは2幅の「苅萱道心石童丸御親子御絵伝」に描かれた計27の場面を、お羽根指し(先端に羽根のついた棒)で次々と指し示しながら、折り目正しく、熱のこもった絵解きを展開していった。よく知られた話ながら、念のため、西光寺が発行する『絵解き 苅萱道心と石童丸』の「台本」を基に粗筋を紹介しておきたい。

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