産経ニュース

【大学ナビ】真価問われる高・大・新テスト改革

ライフ ライフ

記事詳細

更新

【大学ナビ】
真価問われる高・大・新テスト改革

 ■東大高大接続研究開発センター長・南風原朝和氏と考える

 大学入試センター試験の後継として平成32(2020)年度に開始される大学入学共通テスト(以降・新テスト)。当初、「明治以来の改革」と言われていた高大接続改革の中核といえる。だが、新テストについてはさまざまな問題点が指摘され、高大接続改革といっても謳(うた)い文句が先行しているきらいがある。テスト理論が専門で、高大接続システム改革会議の委員も務めた東京大学の南風原朝和(はえばら・ともかず)・高大接続研究開発センター長(前理事・副学長)への取材をもとに改革の実像を追った。(編集委員 関厚夫)

                   ◇

 ▼求められる知識観

 文部科学省が今月13日に公表した新テストの実施方針。そこには「知識・技能を十分有しているかの評価も行いつつ、思考力・判断力・表現力を中心に評価を行う」と記されている。

 「知識・技能」は「思考力・判断力・表現力」の前提であり、だから新テストでは後者を中心に評価するのだ-と読める。しかしながら、知識と思考の関係はそう単純なものなのか。南風原センター長は疑問を呈する。

 「『知識偏重批判』にみられる『知識=暗記・再生』というとらえ方は正しいのでしょうか。知識には浅い知識も深い知識もあります。じっくり、長時間思考することによって、深い理解を伴う知識が獲得される。『ああ分かった』ということで理解を伴ったより深い知識になるんですね。つまり、知識というのは思考と双方向的で一体となっていると考えるべきではないでしょうか」

 南風原センター長によると、知識についてのとらえ方は、新テストのあり方そのものを大きく左右することになるという。

 「思考力を問う問題は、知識以外のものを-となると問題が複雑化し、解くのに時間がかかり、場合によっては悪問になりかねない。テスト問題の作成者が知識以外の新味を出そうと頑張れば頑張るほど、あらぬ方にゆき、何をどう勉強したらよいのか、高校生が途方にくれる結果となる懸念があります。一方、知識問題が単純な暗記・再生問題になってないか-という観点で見直し、『浅く考えたら不正解だが、深く考えれば正解』という内容の問題にすれば、問題作成者の負担は減り、高校生の側にも『もっと深く知り、もっと本質を理解しなくては』と、勉強の方向性が見えてくると思います」

 ▼理念はどこに

 先日、新テストの国語の記述式問題のモデル問題とモニター調査の結果が発表された際、各方面から問題点が指摘された。また英語については民間の「スピーキングテスト」の導入に関して、運営の安定性から採点の信頼性まで「危うい要素で溢(あふ)れている」との見解を研究者が表明している。だが、いま問われているのはこうした新テストの内容面だけではない。

 「平成25年の教育再生実行会議の提言では、『共通テスト』は『達成度テスト(発展レベル)(仮称)』とされ、年複数回実施、1点刻みではない段階別評価によるものとする、一貫した理念のもとにあった。その後、個別的問題のみが議論された結果、理念が分かりにくく、私立大学も対応のしにくい改革案になったことは否めない。さらに議論を進め、全大学・高校が納得して参加できる改革を推進していただけるよう期待する」

 日本私立大学連盟は先月、文科省による高大接続改革の「現況」について意見書を発表し、そう結んだ。南風原センター長は語る。

 「センター試験が複雑化し、肥大化したという認識、AO・推薦入試の一部が『学力不問』になっているという問題-この2つは一連の高大接続改革の議論のなかで大学関係者に共有されていたと思います。しかしながら、そのほかの論点についてはコンセンサスは得られていないのが実情だと思います。その一方で、『新テスト開始は2020年度』という決定だけが先行していて、見切り発車になっている。たとえば、英語の民間試験の活用については、各試験機関の自己申告に基づく粗い段階別成績表示では、一般入試の選抜では使い物になりません。試験間での得点の対応表が必要になりますが、20年4月の運用開始まであと2年9カ月という現時点でも、具体的な検討が何もなされていない。このままでは高大接続改革は、つぎはぎ、小手先だけの『理念なき改革』に陥りかねない懸念があると考えています」

「ライフ」のランキング