産経ニュース

【書評】ノンフィクションライター・柳澤健が読む『捨てられないTシャツ』都築響一編 森羅万象に意味や物語ある

ライフ ライフ

記事詳細

更新

【書評】
ノンフィクションライター・柳澤健が読む『捨てられないTシャツ』都築響一編 森羅万象に意味や物語ある

『捨てられないTシャツ』都築響一編 『捨てられないTシャツ』都築響一編

 流行とも景気の良しあしとも関係なく、自分が興味を持った本だけを作り、それをきちんと採算ラインに乗せる。

 それがどれほど困難で、どれほどの才能を必要とするものか。元編集者で、現在は売れないノンフィクションライターである筆者には、少しは理解できるつもりだ。

 『TOKYO STYLE』

 『ROADSIDE JAPAN』

 『珍世界紀行』

 『賃貸宇宙』

 著書のタイトルは、町であり国であり世界であり宇宙であり、すなわちひとつの空間であることを示す。

 人の欲望、人の苦しみ、人の心の闇のすべてが同居する空間を、写真と文章で表現する。それが都築響一の仕事だ。

 しかし、本書『捨てられないTシャツ』に、カメラマン・都築響一、ライター・都築響一の要素は希薄だ。

 着古しても捨てられないTシャツを70人に選んでもらい、写真を撮り、Tシャツにまつわるエピソードを聞く。もしくは自分で書いてもらう。

 本書は、編集者・都築響一が前面に出た本なのだ。

 着古したTシャツのブツ撮りは、一見して、写真的な魅力があるようには思えない。

続きを読む

「ライフ」のランキング