産経ニュース

【話の肖像画】俳優・仲代達矢(4)「二度と黒澤組には出ないぞ、と思った」

ライフ ライフ

記事詳細

更新

【話の肖像画】
俳優・仲代達矢(4)「二度と黒澤組には出ないぞ、と思った」

「乱」での一場面 (c)KADOKAWA 1985 「乱」での一場面 (c)KADOKAWA 1985

 〈黒澤監督と衝突して降板した勝新太郎さんの代わりに「影武者」(55年)に出演。武田信玄とその影武者である泥棒の2役を演じた〉

 黒澤さんから「出てくれ」と言われて悩みました。勝さんと僕は古い友人なので、勝さんに相談しようとしましたが連絡が取れない。でも、黒澤監督には深い恩義を感じていましたから、「代役でも喜んで出演いたします」と言いました。すると、新聞に「喜んで出る」「喜んで出る」と見出しが並び、まるで私が大はしゃぎしているような印象で。「けしからん」と批判されたりもしました。

 信玄は仲代なりにできましたが、泥棒の方はどうも勝さんの動きが出てしまう。評論家に「勝の方がよかったのでは」と言われ、思わず「勝さんの影武者を見たのか」と反論しました。しかし、妻(元女優で演出家の宮崎恭子さん)まで「泥棒は勝さんの方がよかったわね」って…。でもカンヌ国際映画祭の最高賞を受賞しましたし、後悔はしていません。

 〈大作「乱」(60年)では、子供たちに裏切られ、狂気に取りつかれる秀虎を熱演した〉

 当時、私は50代で秀虎は70代の設定。毎回4時間かけてシワを全部メークで作りました。あの顔で仲代のものは目ぐらいです。

 燃えさかる城の長い階段を私が降りてくる場面の撮影は忘れられません。あの城の製作費は4億円だそうで、「君が転んだら4億円がパーだ」と黒澤さんに言われました。城の中で待機していると、火がつけられて燃え始める。スタッフはみんな避難して私1人。不思議に落ち着いた気持ちで歩き始めました。急な階段ですが、正気をなくした役なので、足元を見ちゃいけない。背後では城が炎上している。役者って、画(え)になりさえすれば、何だってやってしまうんですよ。(聞き手 岡本耕治)

「ライフ」のランキング