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【話の肖像画】俳優・仲代達矢(3)三国連太郎と演技合戦「大先輩なのに、私も生意気だった」

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【話の肖像画】
俳優・仲代達矢(3)三国連太郎と演技合戦「大先輩なのに、私も生意気だった」

俳優・仲代達矢さん(伴龍二撮影) 俳優・仲代達矢さん(伴龍二撮影)

 〈小林正樹監督と組み、「人間の條件」6部作(昭和34~36年)や「切腹」(37年)など多くの名作を生み出した〉

 小林監督は、悪しき体制に人間個人がどうやって立ち向かうか、という内容が多かった。撮影現場では、何というか哲学的なまでに静か。怒鳴り声なんて決して出しません。ただ、しつこいんです。「もう一回」「もう一回」って何度も演じさせる。「鬼の小林」と呼ばれていました(笑)。

 〈五味川純平原作の「人間の條件」は、戦争の中で自らの正義を貫き続ける主人公、梶を描いた9時間を超す大作だ〉

 小林監督とは、「黒い河」(32年)が初顔合わせで、「人間の條件」の主役に選ばれたときは驚きました。小林監督は梶の最期を思い浮かべ、「梶の狂気に取りつかれた目ができるのは仲代しかない」と思ったそうです。

 氷点下30度の中、氷を割って水の中につかったり、戦車に立ち向かったり…と大変な撮影でした。10人くらいに私がリンチされる場面は、本当に殴られました。顔がはれて、鼻血が出てくる。それを宮島義勇カメラマンがじーっと撮る。あのとき、私を一番強く殴った人のことは忘れないです(笑)。

 戦車にひかれる直前、地面に掘った穴に飛び込むという撮影もありました。迫り来る戦車を見ると怖いので、キャタピラの一点だけを見つめ、夢中で飛び込む。途端に真っ暗になって、頭上を戦車が轟音(ごうおん)とともに通り過ぎたのを覚えています。

 〈武士道の非人間性を描いた「切腹」は、浪人(仲代)が井伊家の家老(三国連太郎)に語るスタイルで、カンヌ国際映画祭で審査員特別賞を受賞〉

 これは、語りで聞かせる芸ですね。われながら当時29歳で、よくあれだけやったと思います。

 三国さんとは演技合戦でした。ある日、三国さんが「仲代くん、君の演技は違う」と言い出すんです。「君がこう来ると思って、自分の演技プランを考えていたんだ」と。そんなこと言われてもねえ。「どうやればいいんですか? いや、それはやりたくないんですけど」なんて反論しました。また、「映画は演劇と違ってマイクがあるから、僕が遠くにいても大声を出さなくていい」と三国さんに言われ、「2人が同時に写る場面もあるから、距離感は大切です」と言い返したりね。大先輩なのに、私も生意気でした。

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