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「リアルのゆくえ」展 写実の系譜に日本人の感性

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「リアルのゆくえ」展 写実の系譜に日本人の感性

高橋由一「鮭」 制作年不詳 油彩・キャンバス、山形美術館寄託 高橋由一「鮭」 制作年不詳 油彩・キャンバス、山形美術館寄託

 しかし、大正期に頭角を現した岸田劉生に由一の思想は引き継がれた。土がむきだしとなった切り通しや壺や果物の圧倒的な実在感。劉生は、対象物に向き合って、路傍の小さな石や草までも描出し、精神性の高い作品を制作した。

 由一も劉生も官展系の団体に属さず、正統派ではなかった。むしろ異端で、本展で紹介された約50人の画家はその系譜といっていい。明治から昭和の時代に画壇と関わることなく生きた孤高の画家、高島野十郎(やじゅうろう)もその一人で、闇に揺らぐ蝋燭の炎や木々や草花の細部の描写にこだわり、独自の世界をつむぎ出した。

 リアルの流れは現代まで連綿と続く。人のいない風景にも関わらず、その気配さえ感じさせる犬塚勉の風景画や、何年にもわたり対象と対峙(たいじ)し執拗(しつよう)に隅々まで描き尽くす水野暁(あきら)の生命感のある作品群。

 由一の「鮭」が誕生してから一世紀以上を経た平成の時代、長らくスペインで活動を続けた後に日本に創作の場を移した磯江毅(つよし)は、由一に敬意を表して「鮭」に挑戦した。テクニックを駆使して由一にまさる緻密さを見せる。

 こうした日本の写実画について、本展を企画した同館の土方明司館長代理はこう説明する。「形に宿っている本質的なものを引きずり出そうとすると、見慣れた現実が違うものに見えたりする。細部への異常なこだわりに、一木一草に意味と価値を見る日本人の感性がある」

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