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【話の肖像画】「いきなり!ステーキ」社長・一瀬邦夫(3) 36歳で都内に4階建てビル

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【話の肖像画】
「いきなり!ステーキ」社長・一瀬邦夫(3) 36歳で都内に4階建てビル

経営の工夫を重ね「キッチンくに」を軌道に乗せた=昭和53年 経営の工夫を重ね「キッチンくに」を軌道に乗せた=昭和53年

 仕事に集中するため身を固めようと思い、「キッチンくに」のオープンの1カ月前に結婚しました。僕は27歳、妻は26歳。2人で店を切り盛りしました。売り上げは1日1万円ほど。2万円を超えると妻と「今日は忙しかったね」と喜んだものです。子供も授かり、妻は予定日直前まで働いていました。

 〈独立後は試行錯誤を余儀なくされた。その経験から経営者としての才覚を開花させていく〉

 店を繁盛させるために必死で知恵を絞りました。主力メニューはステーキととんかつ、エビフライです。前を通りかかった人にも何をいくらで食べられるのか知ってもらうため、板に「ポークカツ定食 ライスみそ汁付き800円」などと書いて外につるしました。出前も始めました。当時はデリバリーが攻めの販売方法として増え始めた時期だったので人気を呼び、売り上げはどんどん伸びていきました。

 〈昭和54年、東京・向島に自宅兼店舗の4階建てのビルを造った。1、2階が店舗で客席を約60席に増やし、屋号も「ステーキくに」と改めた。36歳だった。「もうビルを持ったのか」という周囲の声に得意になった。平成3年までに都内の下町を中心に店舗を増やしていく。そんな折、妻が病に倒れた〉

 妻は48歳で亡くなりました。細やかな気遣いができる女性で、妻に会いたくてやってくるお客さまも多かった。ただ、けんかも多かった。訪れた葬儀会社の担当者が彼女の体を軽々と抱きかかえたとき、「もっと優しくしてやればよかった」との思いがこみ上げ、涙が止めどなくあふれました。ひつぎにしがみついて男泣きしました。

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