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【文芸時評】公共図書館に未来はあるか 5月号 早稲田大学教授・石原千秋

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【文芸時評】
公共図書館に未来はあるか 5月号 早稲田大学教授・石原千秋

石原千秋さん 石原千秋さん

 僕の所属する学科では、導入教育として1年生に「日本文学基礎演習」という科目を設置して、古典文学と近代文学を半期ずつ学ぶ。その授業に図書館ガイダンスを組み込んである。僕が学生時代には図書館に行けばまずカードをくらなければならなかった。

 いまは図書検索はネットでできる。しかし、それ以外にもいくつもの検索サイトやアーカイブスにアクセスできるから、世界での情報格差がなくなってきた半面、それらのサイトやアーカイブスの特徴を覚え、その検索の方法を覚えるのが格段に複雑になった。だから図書館ガイダンスは、昔のように図書館を実際に回るのではなく、パワーポイントで行う。

 教員のコメントコーナーもあるが、ある教員が近い将来図書館はなくなるかもしれないと話した。そうだろうなあという契約を、ごく最近行った。公共図書館への電子書籍の販売契約である。いまはまだ過渡期のようで、一度に一人、回数制限、期間制限などがある。将来的には一閲覧いくらという選択肢もあるかもしれない。公共図書館と出版社・作家との関係は微妙だが、日本に電子書籍で小説を読む習慣が根付かなければ、文学が滅びることだけはほぼまちがいない。公共図書館が電子書籍だけを貸し出す日も近い将来来るだろう。そうなればもう「図書館」という建物はいらなくなるかもしれない。極端に言えば、ホームページだけあればいい。「憩いの場兼閲覧所」として残るだけかもしれない。

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