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【書評】書評家・倉本さおりが読む『ビリー・リンの永遠の一日』ベン・ファウンテン著、上岡伸雄訳 容易ではない「心の整理」

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【書評】
書評家・倉本さおりが読む『ビリー・リンの永遠の一日』ベン・ファウンテン著、上岡伸雄訳 容易ではない「心の整理」

『ビリー・リンの永遠の一日』(ベン・ファウンテン著・上岡伸雄訳、新潮社・2300円+税) 『ビリー・リンの永遠の一日』(ベン・ファウンテン著・上岡伸雄訳、新潮社・2300円+税)

 世界を動かしているのは「善人」でも「悪人」でもない。無数の「基本的にはいい人たち」だ。彼ら--つまり私たちの見る、無邪気で幼稚な夢こそが戦争の原動力になっているということ。そんな、ばかばかしくも残酷な真実を、ありったけの皮肉と悲哀を込めて小説に昇華させ、全米批評家協会賞を受賞したのが本作。BBCが選ぶ21世紀のベスト小説にランクインしているのもうなずける。

 19歳の主人公・ビリーはイラク戦争に従軍し、仲間を失う苛烈な戦闘に巻き込まれてしまう。その一部始終を保守派のメディアが撮影していたことから、ビリーの分隊の生き残りはアメリカ本国で英雄視されることに。かくして一時帰国を命じられたビリーたちは、戦意高揚のためのマスコットとして各地に駆り出されるようになる。物語の中心となるのは、彼らがとりわけゴージャスなアメフトのハーフタイムショーに出演するまでの、たった半日の出来事だ。その数時間の中に、アメリカのすべてが凝縮されているといっても過言ではない。

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