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【書評】ノンフィクション作家・河合香織が読む『覗くモーテル 観察日誌』ゲイ・タリーズ著、白石朗訳

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【書評】
ノンフィクション作家・河合香織が読む『覗くモーテル 観察日誌』ゲイ・タリーズ著、白石朗訳

『覗くモーテル観察日誌』ゲイ・タリーズ著、白石朗訳(文芸春秋・1770円+税) 『覗くモーテル観察日誌』ゲイ・タリーズ著、白石朗訳(文芸春秋・1770円+税)

 人間への飽くなき好奇心から覗きをしたと話していた覗き魔が、年を経るごとにだんだんと人間嫌いになっていくというところが興味深い。それでも、いつかは自分が求めているものを目にできるのではないかという期待や憧れがあるからこそ、覗きをやめられないのだろう。信頼できない相手だと思いつつも、地を這(は)うようなその姿に、著者は自分に似たものを見つけ、覗き魔と30年以上にも渡って交流し続けた。実名での出版を拒んでいたフースが、80歳近くなってようやく出版を許可し、自身や家族の写真までを本に掲載した背景には、最後に人を信頼したいという期待があるように感じた。

 良心が咎(とが)めようとも「人はなぜ覗くのか」という根源的な命題に対する答えを著者は鮮やかに炙(あぶ)り出していく。覗き魔を覗くジャーナリストを覗く読者という3重の入れ子構造が面白い。私たちもまた、自分の本当に見たい何かを期待して、本を通して人の生活を覗いているのだということに気づかされる。(文芸春秋・1770円+税)

 評・河合香織(ノンフィクション作家)

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