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【書評】ノンフィクション作家・河合香織が読む『覗くモーテル 観察日誌』ゲイ・タリーズ著、白石朗訳

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【書評】
ノンフィクション作家・河合香織が読む『覗くモーテル 観察日誌』ゲイ・タリーズ著、白石朗訳

『覗くモーテル観察日誌』ゲイ・タリーズ著、白石朗訳(文芸春秋・1770円+税) 『覗くモーテル観察日誌』ゲイ・タリーズ著、白石朗訳(文芸春秋・1770円+税)

 ■人間への飽くなき好奇心

 この本を手に取るのに少しためらった。覗(のぞ)きは恥ずべき行為だという良心からだ。しかし、もう一人の自分は知りたいと強くささやく。

 本書は他人の性行為を覗くためにモーテルを買い取り、屋根裏に覗き穴を作って、30年間観察してきたジェラルド・フースという男の記録である。1980年、アメリカを代表するジャーナリストである著者のところに、フースから一通の手紙が届いた。著者は好奇心が抑えられずに会いに行き、一緒に天井から他人の性行為を覗いてしまう。はじめは躊躇(ちゅうちょ)しつつも、もっとよく見ようとどんどん身を乗り出していく。

 個室の中で人は無防備になって、その本性を露(あら)わにする。テディベアを相手にした性行為や近親相姦、果ては殺人。つまらないことで喧嘩(けんか)をし、金のことで争っているみじめな人間の日常も延々と目にすることになる。外面を取り払った人間の姿を知ろうと、金が入っていると見せかけたスーツケースを部屋に置き、牧師がどんな行動をするかを観察する。

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