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【書評倶楽部】圧倒的筆致と奥深いテーマ 生きることとは何か? 落語家・桂文珍が読む『土の記(上・下)』高村薫著

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圧倒的筆致と奥深いテーマ 生きることとは何か? 落語家・桂文珍が読む『土の記(上・下)』高村薫著

『土の記(上・下)』高村薫著(新潮社・各1500円+税) 『土の記(上・下)』高村薫著(新潮社・各1500円+税)

 私は主人公の住む宇陀と環境の似た丹波篠山の奥で農家の息子として生まれた。それゆえに自分の原風景に出合ったような気分で読み進んだ。

 生きることとは何だろうと問いかけてくるこの物語では、雨の降る場面が印象的だ。「ぼとぼと、ぱたぱた、ぼとぼと、ぱたぱた、雨粒が幾重にも重なって、杉も茶の木も棚田も畑もぼとぼと、ぱたぱた…」。物語の終盤、ナマズがいなくなって、大震災と原発事故が起きる。

 「昭和の時代」から「和の時」を抜けば、主人公の妻の名となる。「ぼとぼと、ぱたぱた」が伝えるのは雨の音だけだろうか…。著者のメッセージは、流行(はやり)の言葉で言うなら忖度(そんたく)し放題です。いや面白かった。(新潮社・各1500円+税)

                   

【プロフィル】桂文珍

 かつら・ぶんちん 昭和23年、兵庫県生まれ。桂小文枝に入門。古典、新作ともこなす。著書に『落語的ニッポンのすすめ』ほか。

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