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【話の肖像画】作曲家・すぎやまこういち(4) あの代表曲は5分でできた

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【話の肖像画】
作曲家・すぎやまこういち(4) あの代表曲は5分でできた

現在も指揮者として、コンサートでタクトを振る (本人提供) 現在も指揮者として、コンサートでタクトを振る (本人提供)

 〈近年のすぎやまの代表作といえば、やはりゲーム『ドラゴンクエスト』(ドラクエ)の音楽だ。では、なぜゲーム音楽を手掛けることになったのか。それは、ドラクエの制作会社『エニックス』(現在のスクウェア・エニックス)宛てにすぎやまが書いた、一通の手紙がきっかけだった〉

 エニックスが作った別の将棋ゲームをプレー中に、コンピューターの駒の組み方に疑問を持ち、手紙を書いたんです。それがたまたま目に留まったようで、その後、エニックスからゲーム音楽の作曲の依頼を受けました。

 ただ、「ドラクエI」(昭和61年発売)の場合、僕が制作に加わったのは最終盤のこと。打ち合わせに行ったときには、既に音楽は(他の制作者の手により)全部できあがっていました。マスターアップ(納期)も終わっていた状況です。それを、プロデューサーが「この曲ではダメだ」として、僕の音楽に全て差し替えることになりました。締め切りは、無理やり延ばした1週間後。だから、「ドラクエI」の作曲時間は、1週間しかなかったんです。

 (『ドラクエ』を代表する曲である)「序曲」は、5分でできました。そういうパッとメロディーが浮かんだ曲のほうが、こねくり回して作った曲よりも、素直で出来がいいものです。ただ、この曲は5分プラス、僕がそれまで生きてきた55年分が詰まっている。まあ、この言葉は、そういう言葉を残した画家のピカソの受け売りですが。

 〈だが、実績のある作曲家の参加に、現場の若手からは最初、反発もあったという〉

 当時のゲーム制作は、大学のサークルの延長みたいな環境が多かったですからね。若い彼らにしてみれば、外部からいきなり年寄りの作曲家が入ってくるわけですから、当然抵抗感はあったと思います。ただ、一緒に話をしたり、ゲームをしたりしたことで、僕が大変なゲーム好きだと分かってもらい、一挙に前向きになりました。何しろ、当時のメンバーの誰よりも、僕が一番年季の入ったゲーマーでしたから。

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