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【書評】詩人・会田千衣子が読む 『絆~走れ奇跡の子馬~』島田明宏著 つながりから復興へ続く道

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【書評】
詩人・会田千衣子が読む 『絆~走れ奇跡の子馬~』島田明宏著 つながりから復興へ続く道

『絆~走れ奇跡の子馬~』島田明宏著 『絆~走れ奇跡の子馬~』島田明宏著

 北欧の伝説「サガ」のような物語である。

 まず福島県南相馬市で1千年の伝統があり、500騎ほどの騎馬武者が出陣する、血の騒ぐような相馬野馬追での宴から始まる。零細牧場の松下ファームの拓馬は、引退した愛馬シロと参加する。

 この母馬シロから、東日本大震災発生の平成23年3月11日、子馬が誕生する。生前からリヤンドノール(北の絆)と名付けられていた。

 地震と津波で壊滅的な被害を受けた牧草地の、ヘドロまみれの水たまりで真っ黒になったシロから、奇跡的に芦毛の牡馬のリヤンが生まれるのである。直後、シロは死んでしまい、リヤンは被災の馬、復活の希望として成長していく。

 拓馬は離乳後のリヤンを資力のある馬主に所有してもらい一流厩舎(きゅうしゃ)に預けて競走馬として育ててもらうように決心する。そしてリヤンはその秀でた資質を見抜かれ、大馬主に破格の1億円で売られる。

 こうして松下ファームもまた、家と牧場を建て直せることになるのである。

 これからがリヤンの伝説のような成長と活躍ぶりで読者をはらはら感動させながら、物語は進んでいく。

 著者の文体は、修辞語もなく淡々としていて、馬と人間の優しく温かい感情の交わりを叙述している。

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