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【書評】法政大学名誉教授・川成洋が読む 『漱石と「學鐙」』小山慶太編著 優れた大学教師だった漱石

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【書評】
法政大学名誉教授・川成洋が読む 『漱石と「學鐙」』小山慶太編著 優れた大学教師だった漱石

『漱石と「學鐙」』小山慶太編著 『漱石と「學鐙」』小山慶太編著

 今年は夏目漱石生誕150年であり、これを記念して彼のゆかりの地に建設中の東京・新宿区立漱石山房記念館は9月開館予定である。一方、出版界では多種多様な漱石関係書が遂次出されている。

 本書は、長年日本の欧米文化の導入を牽引(けんいん)してきた雑誌『學鐙』創刊120年を節目に、それまで同誌に掲載された漱石の「カーライル博物館」を嚆矢(こうし)として、「木曜会」に集まった門下生やそれ以降の漱石にまつわるエッセー25篇を収録している。

 本書では、ロンドン留学期(1900~02年)の英文学者としての漱石を紹介しているが、人口に膾炙(かいしゃ)されているネガティブな漱石像はなぜ生まれたのか。彼はロンドン到着後1カ月ごろ、ロンドン大学の講義に失望しケンブリッジに赴くが、当時のケンブリッジ大学には「英文科」と呼べるほどのものが完成しておらず、オックスフォード大学も同様だった。大学での「人文学」の本命はなんといっても「ギリシャ・ラテン文学」であり、それ故に英文学が最初に正式教科として採用されたのは工業専門学校、勤労者が受講する成人学校などにおいてであり、それはまさしく「貧民の古典文学(プア・マンズ・クラシクス)」だった。

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