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【からだのレシピ】ゲノム+AI=患者に最適ながん治療法

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【からだのレシピ】
ゲノム+AI=患者に最適ながん治療法

 ■がん研などが未来志向型システムを共同研究

 患者のゲノム(全遺伝情報)と医学情報をAI(人工知能)で解析し、最適のがん治療方法を提供する未来志向型システムの研究が稼働した。公益財団法人がん研究会(がん研=東京都江東区、草刈隆郎理事長)とITベンチャー、FRONTEOヘルスケア(東京都港区、池上成朝社長)が共同研究する。手始めに乳がんと肺がんを対象とし、5年以内をめどにスタートさせる計画だ。(大家俊夫)

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 共同研究には遺伝医学の世界的な権威である米シカゴ大・中村祐輔教授が特任顧問として参画。これに先立ち、がん研に昨年10月、がんプレシジョン医療研究センターが設立。所長にはがん研研究本部長の野田哲生氏が就任した。

 現行のがん治療では、効かない可能性の患者にも抗がん剤を投与したり、治療方法が尽きてしまったりする弊害もある。

 そうした弱点に対して、KIBIT(キビット)というAIが大きな威力を発揮する。FRONTEOヘルスケアが開発を担当する。

 ▼4千倍の理解速度

 1つは診断支援システムだ。計画では患者はまず、がん研有明病院で診察を受ける。がんと診断された場合、同意を得た上で同センターで患者の遺伝子情報を取得。がん関連遺伝子の異常を解析するクリニカルシークエンスや血液などからがん細胞の遺伝子異変を調べるリキッドバイオプシーの手法により、遺伝子異常などを見つけ出す。これらの遺伝子情報に加え、論文などの医療情報をKIBITに入力する。

 その際、AIにやみくもに医学情報を覚えさせるのでなく、中村特任顧問のようなハイレベルの専門家が治療に応用できる良質な論文を選別してAIに読み込ませる。KIBITには「不要な情報を省きながら専門家の判断と感覚を学ぶのに優れ、しかも人間の約4千倍の速度で文章を理解して仕分けできる」(同社広報)機能がある。これにより、良質な治療方法を迅速に選び出せるようになるという。

 ▼適切な説明を選ぶ

 2つ目はインフォームドコンセント(十分な説明と同意)を支援するシステムだ。KIBITは医師を補助する形で、患者の理解に応じて双方向で適切な説明レベルを選び出す。

 これにより、「インフォームドコンセントに要する時間を短縮でき、医師は治療により多くの時間を割けるようになる。患者も医師には聞きづらいことも、相手がAIなら遠慮なく質問できる」と野田所長は説明する。

 KIBITの支援を受けながら、最終的には医師が判断して、患者に複数の治療方法を提示する。

 がんの治療方法は日々進歩しながら、複雑化している。中村特任顧問は「どんな優秀な医師でも世界中の医療情報をすべて知っていることは難しい。そこにはAIが手助けとなる」とし、患者に対しては「抗がん剤の効き具合を遺伝子レベルで事前に調べ、なるべく苦しくない治療方法を探し出す。あるいは免疫療法や分子標的薬治療を提案し、最適な治療方法を見つけ出すことを目指す」と期待を込める。

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