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【話の肖像画】俳優・滝田栄(5)地蔵菩薩像を彫り気仙沼に安置 震災とあの戦争を考える

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【話の肖像画】
俳優・滝田栄(5)地蔵菩薩像を彫り気仙沼に安置 震災とあの戦争を考える

滝田栄さん(城之内和義撮影) 滝田栄さん(城之内和義撮影)

 〈東日本大震災の犠牲者のため、高さ約130センチの地蔵菩薩像を彫った。平成25年には宮城県気仙沼市の高台に「気仙沼みちびき地蔵堂」を建て、その仏像を安置。被災者の集いの場として開放し、年2回の供養式を主催している〉

 気仙沼には津波で全てを失った知人が何人もいたので、仲間に呼び掛けて集まった物資や支援金を届けてもらった。次に何ができるかを考えたときに、おびただしい数の人たちが、突然の津波で訳が分からないまま命を失って、きっと魂は大変な状態になっているだろうなと感じたんです。その人たちの霊が安らかな世界に導かれるように、たとえ地獄に落ちた人でも救うという地蔵菩薩を彫ろうと決めたんです。ちょうどいい大きさの木があったので、すぐに彫り始めました。完成まで2年はかかると思っていましたが集中して彫ったら4カ月でできました。

 それまでは叱る仏像ばかり彫っていたんですが、このお地蔵さんを彫ってからは優しい表情を見せる仏像ができるようになったんですよ。僕の中に優しさというものが、やっと湧いてきたからなんでしょうね。でもまだあの頃は「どうして何度もこんな悲劇を繰り返すんだ」という憤りがあって、半分は怒っていたから、気仙沼のお地蔵さんは見方によると怖い表情に感じることもあるんですよ。

 地元の人たちが犠牲者のために祈ることのできる場所を作りたいと考えていたら、東京都内で地蔵菩薩像を展示する機会があったので、そこに賽銭(さいせん)箱を置いてお堂を建てるための寄付をお願いした。それと同時に全国を講演して歩いて協力を呼び掛け、インターネットでもお願いしたら結構集まって、建てることができたんです。地元の人たちも、お地蔵さんとお堂を好きになってくれて、掃除や草取りを自主的にやってくれるようになりました。

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