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【文芸時評1月号】
文化が世界の形を決める 早稲田大学教授・石原千秋
僕の言いたいことはこうだ。世界の形を決めているのは文化であると。テクノロジーは、人の望むことなら何でもかなえてくれる。あるロボット研究者が言っていた。「もうすぐ、人のできることならすべてロボットができる時代が来る。では人が生まれて、やりたいことをすべてロボットに任せて、ベビーベッドに寝たまま寿命を全うするのが人間らしい生き方と言えるのか」と。彼にして悩みは深いようだった。
テクノロジーは自動作用があるかのように進歩する。それを止めることができるのは文化しかない。どこまで進歩させるかを決めるのも文化しかない。大学では、文系学部の縮小は止まりそうもない。それは、僕たちが世界の形を決めることができなくなることを意味する。僕はただこのゆえに、文系学部の縮小に反対する。ただこのゆえに、文学に期待し、だから厳しくありたいと思っている。新しい年を迎えるに当たって、これだけは書いておく。
今月は論評すべき文学作品は一編もなかった。これが今月の論評である。

