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【書評】ミステリー評論家、稲塚由美子が読む『煽動者』ジェフリー・ディーヴァー著、池田真紀子訳 群集心理操る犯人を追う

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【書評】
ミステリー評論家、稲塚由美子が読む『煽動者』ジェフリー・ディーヴァー著、池田真紀子訳 群集心理操る犯人を追う

『煽動者』ジェフリー・ディーヴァー著、池田真紀子訳(文芸春秋・2400円+税) 『煽動者』ジェフリー・ディーヴァー著、池田真紀子訳(文芸春秋・2400円+税)

 人間のわずかな所作から心理を読み解く「嘘を見破る天才」キャサリン・ダンス捜査官シリーズ最新作のサスペンス・ミステリーである。

 作者は、傑作『ウォッチメイカー』など、四肢麻痺(まひ)の科学捜査官ライム・シリーズで有名だが、何より作者の創りだす主人公は皆、力でなく頭脳だけで犯罪解決に取り組んで痛快だ。

 物語の舞台はカリフォルニア州モントレー。週末のある夜、人気バンドのコンサートを楽しみに人々が集まった超満員のナイトクラブで、群衆の転倒事故が起きた。

 かすかな煙の臭い。少しずつ不安が漂いはじめ、そして誰かが「火事だ」と言ったようで、人々は我先に出口へと押し寄せた。集団になると人は別の生き物に変わる。人それ自体が凶器となり、渦となって他人を踏みつけ、圧死させてしまう。

 現場に駆けつけたダンスは、事故にしては不可解な事実を発見し、これは事故でなく、何者かが意図してパニックを煽動(せんどう)した事件だと確信する。だが、犯人は利口で、用意周到。その後も、人間の心に初めから存在している「恐怖」と「群集心理」を操り、人々を容易にパニックに陥れる事件を続発させる。

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