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【書評】文芸評論家・池上冬樹が読む 『虎狼』モー・ヘイダー著、北野寿美枝訳 サスペンスの新女王の秀作

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【書評】
文芸評論家・池上冬樹が読む 『虎狼』モー・ヘイダー著、北野寿美枝訳 サスペンスの新女王の秀作

『虎狼』モー・ヘイダー著、北野寿美枝訳 『虎狼』モー・ヘイダー著、北野寿美枝訳

 数年前、東野圭吾の『容疑者Xの献身』が英訳され、アメリカ探偵作家クラブ賞(MWA賞)の最優秀長篇賞にノミネートされたことがあったが、その時の受賞作がモー・ヘイダーの『喪失』だった。東野作品と似てなかなかひねりのある小説であったけれど、本書『虎狼』はそれ以上のツイストと驚きがある。

 オリヴァーは妻子をともなってサマセット州にある別荘を訪れる。64歳のオリヴァーは2カ月前に心臓手術をうけ、ようやく医師の許可が出て静養にきたのだった。

 しかし彼らの前に、15年前の災厄があらわれる。娘の元恋人が惨殺された事件を思い出させるものが転がっていたのだ。やがて刑事を装う2人があらわれ、一家は囚(とら)われの身となる。

 一方、幼いときに小児性愛者の犠牲になった兄をもつジャック・キャフェリー警部は、兄の遺体を求め関係者を尋ね歩いていた。そこにオリヴァーの飼い犬があらわれ、飼い主を探すことになる。

 監禁事件とキャフェリー警部の探索が並行していく。本書はキャフェリー警部シリーズ第7作で、兄の事件追及は前作(第5作『喪失』、第6作『人形』)から続いているけれど、十分単独でも読めるだろうし、そもそも本書は前者の比重が大きい。男2人の狙いは何なのかを伏せつつ、随所でひねりを加えて、予想もしない方向へと読者をひっぱっていくからである。

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