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ボルタンスキー、歴史的空間で個展 亡霊たちのささやきが聞こえる

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ボルタンスキー、歴史的空間で個展 亡霊たちのささやきが聞こえる

「アニミタス」(小さな魂)2014年 Photo: Angelika Markul Courtesy the artist and Marian Goodman Gallery「影の劇場」(1984年) 「アニミタス」(小さな魂)2014年 Photo: Angelika Markul Courtesy the artist and Marian Goodman Gallery「影の劇場」(1984年)

 「人は2度死ぬといわれる。1度目は実際の死。2度目は写真が発見されても、それが誰かを知る人がいない時だ」。かつて彼は本紙にこう語ったことがある。肖像写真や古着などを使い、名もなき人々の存在と不在、記憶と忘却を強く意識した作風は、ユダヤ人の父をはじめ、ホロコーストから生き残った人々が身近だった生い立ちが影響している。「人は皆、唯一無二の存在。誰かが完全にいなくなるということが私を苦しめる」

 他者を想う“巡礼の地”を近年、ボルタンスキーは残そうとしている。例えば瀬戸内海に浮かぶ豊島(香川県)では、世界中の人々から収集した心臓音を聞ける作品「心臓音のアーカイブ」を恒久展示。今夏には島民らを中心に、それぞれ大切な人の名を書いた風鈴を山の木々に結ぶプロジェクト「ささやきの森」を展開した。また、人気(ひとけ)のないチリの砂漠でも、数百もの日本製風鈴が“魂の歌”を奏でる幻想的風景をつくり、その様子を映像作品「アニミタス」として今回展示している。

 「これらの作品がいつしか私の手を離れて消滅しても、誰かに思いをはせる巡礼の地として生き続けたら、と夢想する」とボルタンスキー。ちなみにチリで「アニミタ」とは、霊魂をまつる路傍の小さな祭壇を指すという。

 12月25日まで、第2・4水曜休。問い合わせは(電)03・5777・8600。(黒沢綾子)

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